ただ1枚のために

美術館という名称ではなく、ギャラリーの名称がいかにもふさわしい。そこは、こじんまりとして、プライベートな空間。その空間はたった1枚の絵画のために開かれていた。両脇のガラスケースには「その絵の成り立ち、来歴、そしてここに至るまでの持ち主とのやり取り、真贋騒動」まで10枚のパネルや写真、書籍が展示され、それらに巡り導かれるように、最後の最後に「たった1枚の絵画」へたどり着く。その絵の横には警備員が寄り添う。23歳でなくなったこの絵のモデルの横顔の美しさ以上に、纏っている衣装のオレンジかかった上品なピンク色が今、描かかれたような瑞々しい色に心惹かれた。