落し物

ハンカチを落としましたと、声をかけていただく。ハンカチは音もなく落ちるため気が付くことがない。冬場の落し物の一番は、手袋。時折、拾った方が気遣い、その場の街路樹に目立つように置いてある。気が付き来た道を戻りたどっていけば、手元に戻ってくるようにという配慮だが、どこで落としたか、皆目見当がつかないと、手袋はそのままになっている。                                      通勤経路帰宅時に、いつも通りに歩いているとカチンと音がした。ひょっとするとボタンかもしれないとコートの前をみるとすべてのボタンはついていた。気のせいかもしれない。自宅に戻ってみると、襟で隠れている部分のボタンがないの気が付く。これがあの音の正体。翌日、通勤途上、ボタンでは無理かなと思いつつ、やはりなかった。イヤリングの片方が通り道の植込みに落ちていた。誰かが落とした物、師走の植込みには、そっと落とし主を待っている。